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野生農園ザ☆ばんの明日はどっちだ~藤野での農業実践~ 伴昌彦



<藤野という地域>


都心から電車で1時間ほどの距離にある神奈川県の藤野(今は相模原市に合併され、旧藤野町)は、山梨との県境に位置する山間部の町。


アーティストとか、自称アーティストとか、勤め人だけど土日は森に入って木を伐採している人とか、自然と共に生きてる人とか、廃材で謎の建築物作ってる人とか、何をして生きてるのかよく分からない人とか、世間的にちょっと変人と言われそうな人の比率高めの面白い地域です。


<自然農法の実践>


私はご縁があって、11年ほど前から藤野に畑を借り、都内から通いで自然農法で畑を実践するようになりました。その後、9年前に移住して新規就農し、兼業で農業を始めました。(農薬や化学肥料はもちろん、有機肥料も極力あるいは一切使用しない農法には、自然農法、自然農、自然栽培など、提唱者や手法によって様々な呼び名がありますが、ここでは総称としての自然農法を使用します)


生き物の本来の野生の力を活かす農園にしようと、「野生農園」という屋号をつけました。日陰者の私はあまり自分の名前を前面に出したくなかったのですが、パートナーから「野生農園だけでは誰の農園か分からないから、ザ☆ばんをつけろ」と言われ、5年ほど前から現在の屋号、「野生農園ザ☆ばん」を使っています。yaseinouentheban.com/


ザ☆ばんは、当時彼女が使っていたバンデージの商品名「ザ☆バン」にちなんでつけられました。固有名詞にザをつけるのは文法的に間違っていると思われるかもしれませんが、「ばん」がメジャーになって、「ああ、あのバンか」という時は「Oh! The Ban!」と言っても間違いじゃないようなので大丈夫です。野生農園を使いたい方は、野生農園山田とか、野生農園アウグスティヌスのように自分の名前をつけて自由に使っていただいても構いません。


最初の頃は、使用していた道具は鎌とクワとスコップのみ。川口由一さんの本などを参考にしましたが、本を読んで簡単に出来るようなものではありません。現代の農業が常識としてきた技術体系を疑って、農薬、肥料、耕起と、不必要なものを取り除いていく自然農法ですが、気が付くと私は「無農薬、無肥料、不耕起」に加え「無収穫」と、農業の目的すら否定する尖った農法を実践していました。


しかし、そんなラディカルな農法を続けられるほど強くなかった私は、実績をあげている農家に話を聞きに行ったり、当時私が森林再生の活動で習っていた水脈整備の手法を取り入れたりして、普通に収穫をあげることを目指すようになります。


こうして、作物によってはビニールマルチを使ったり、部分的に機械を使って耕したり、畝を高くして土に空気を送り込んだり、土壌微生物を増やす様々な工夫をするようになりました。その結果、環境負荷は少し高くなってしまいましたが、無農薬、無肥料の自然農法の原則は維持したまま、ある程度は収量をあげられるようになります。


とは言え、自然相手のことですから、なかなか思い通りにはいきません。


苦労の末にようやく出来るようになったスイカがアライグマに食われてしまったり、ニンニクを食べる虫が大発生したり、毎年トラブルの連続です。虫の大発生や野菜の病気の背景には、もしかしたら気候の変化も関係しているのかもしれません。


私が農に関わり始めた10年ちょっとの間でも、極端な長雨と日照りが繰り返されるようになったり、夏の暑さが尋常ではなくなったりと、年々気候が厳しくなっているのを感じます。


そんな中で無理をして栽培の難しい作物を育てるより、これからは野生農園の原点に戻り、厳しい気候でも育つ、雑草みたいな生命力のある野生的な作物を中心に据えていこうかな等とナマケモノらしいことを考えている今日この頃です。今年はキクイモやエビスグサ(ケツメイシという野草茶の原料になるマメ科の植物)など、強くたくましい作物の作付を増やす予定です。




<農業で稼ぐ難しさ>


農産物の価格は安く、現在の生産量では野菜を作って売っても農業収入は僅かです。しかし、手間暇かかって収穫が安定しない野菜をたくさん作ってたくさん売ることを目指しても、自分が苦しくなりそうです。かと言って手間のかからないキクイモやエビスグサを増やしたところで、それが大量に売れるわけでもありません。


農業は仕事にせず、自給自足に絞った「農的暮らし」にシフトするというのも一つの選択肢かもしれませんが、元々は戦争や環境破壊につながらない、地域の自然を活かした仕事をしたいと考えて始めた自然農法です。一見、ナマケモノクラブの目指すダウンシフトとは逆行するかもしれませんが、農業収入をもう少しアップさせる方法は今後も探っていきたいと思っています。


ちなみに現在の私のもうひとつの仕事が若者支援のNPOスタッフ。ニートや引きこもりを経験したような若者達が、人に出会ったり、社会に出るきっかけを作ったりするお手伝いをしています。その一環で、外部研修として私の畑を手伝ってもらったり、藤野周辺の面白い人達の活動に参加してもらったりしています。お手伝いに来てくれた若者にバイト代を払えるようになることが野生農園ザ☆ばんの当面の目標です。


<農産加工に挑戦>


そんな中、収入アップを目指して安易に始めたのが加工品作り。加工品を作れば付加価値がつくと言われますが、その付加価値は、そこに加わる時間と労力によって生み出されるものだったんですね。生産から収穫、調理、袋詰めまでに要した時間から時給を計算すると、あまりの低さに切なくなりそうです。


加工所の家賃なども考えると、作ったものが全部売れても果たして採算が取れていると言えるのか、このままでは微妙です。もっと効率化を進めたり、手間のかからない加工品を開発したり、色々検討は必要ですが、今は野菜だけ作るよりも、それを使ったオリジナル商品を作ることが面白いと感じているので、しばらく色々作って遊んでみるつもりです。


加工品で一番苦労したのが、ポテトチップス

今期残り僅か!こちらで販売中です。


商品を作ることはゴミを作ることでもありますが、世界にマイナスだけじゃなくプラスの効果を及ぼす商品にしようと、フェアトレードのパレスチナオリーブオイルを使ったポテトチップスにしてみました。以下、開発の苦労を描いた4コマ漫画です。



<藤野の多様な仲間たち>


野生農園ザ☆ばんの仕事は基本的に一人でやっていますが、折に触れ、色々な人が助けてくれました。オンラインショップを作ってポテチを売るまでにも色んな人の力を借りています。その点、藤野には多様な人材がいるので大助かりです。


たとえば、ポテチが完成したのは、

私と同じ加工所に入っているチョコレート屋さん「藤野良品店」の柳田さん

シェフをしながら農家をしている「農園土とシェフ」の五十嵐さん

など、色々な方のくれたヒントのおかげ。


自然栽培の農家をしながらコンサルをされているシンプルベジの久保さんのコンサルを受けて補助金をもらい、スライサーを買ったり、オンラインショップを作ったり


そしてオンラインショップや、商品のデザインは、ご近所の革デザイナーHoff

の森永さんが作ってくれました。


野生農園ザ☆ばんが気になった方は是非、余計なものが一切入っていないヘルシーなおやつのご購入お願いします!


野菜そのもののシンプルで深い味が好評です!


オンラインショップでは今後、野菜や加工品だけではなく、山や畑から生まれる、環境に配慮した商品を色々販売していく予定です。新商品ヘチマたわしもよろしく!


 

伴 昌彦


「野生農園ザ☆ばん」係長補佐

(係長は犬のアーナックさん)


自然解説員やフリーライター等を経て、「いのちを大切にする仕事」作りの理念に共感し、ナマケモノ倶楽部の兄弟団体「スロービジネススクール」に参加したご縁をきっかけに、藤野で就農し、自然農法を実践。農場での日々の活動を4コマ漫画で報告。


若い頃、就職できずにアルバイトや無職生活をしていたキャリアを活かし?若者支援NPOのスタッフとして、若者の農場研修を行ったり、悩める若者と面白い大人とをつないだりする仕事もしている。


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