一生に三回は、家づくり!-コブハウスに魅せられて 沓名輝政

ナマケモノ倶楽部(ナマクラ)の会員さんは国内外に400名ほどいます。住まいも、職業も、年齢も、得意なことも様々。「スロー」をハブにした多様な関心事で集まり、実践し、暮らしを紡いでいく人たち。ゆるやかに、あたらしい文化創生を担っていく、カルチャークリエイティブ(文化創造者)たちのネットワーク。それがナマクラの最大の強みであり、魅力ともいえます。


今日は、そのナマケモノ会員の一人で、いろいろな肩書(記事さいごのプロフィール参照)をもつ沓名輝政さんに「コブハウス」について紹介いただきました!

英国のマイケル・バックさんのコブハウス

一生に三回は、家づくり!


大宇宙の万物は流転し調和している。ところが、私たち現代人はその調和を乱している。ゴミを出す。物事に執着する。しかも自分の家を作らない。「えっ?家?」と意外に思いませんでしたか?しかし、鳥も蜂もビーバーも、生き物はみな自分で住処を作る。自分で作らないのは現代人ぐらい。


長い歴史の中で人類が作ってきたのは、粘土の家、コブ [粘土の塊] ハウス(写真 上)。アフリカ起源の古くて新しい家。英国や米国を中心に近代化していて、室内はおシャレでメルヘンの世界。作り方は簡単。粘土、砂、ワラをこねて厚い土壁にして建てる。日本古来の蔵のように、雨や地表の水から保護する屋根としっくい、石積みの基礎を使う。冬はお日様の暖かさ、夏は蔵の涼しさ。では、そんなステキなコブハウスの話をしますね。


まず私の家にまつわる経験から。15 年前に千葉県に土地を買い、羊毛断熱の注文住宅を建て、家族で今も住む。ご多分にもれず「家は一生に一度の一番高い買い物」だと実感。新築当時「ここはこうしておけば良かった」などと感想が出て、母が「家は 3 回建て直して初めて満足できると言うからね」と。「大金を払ったのに。勘弁してよ〜」と心の中で叫んだものです。


その後私は、10 年前に那須非電化工房の藤村靖之博士の「地方で仕事を創る塾」で学び、アメリカの自給自足雑誌「Mother Earth News」の日本語版ビジネス (*1) を始めて転機が訪れる。「コブハウス」の記事の日本語版を発行するとき、米国オレゴン州のコブコテージ社の「ラフィング・ハウス」 (*2) に一目ぼれしたのです。


その後、訪米の機会ができ、同ハウスを訪問。コブハウス界の巨匠イアント・エヴァンスさんと妻のリンダ・スマイリーさんが住むコブハウスです。


イアントは生粋の自然保護活動家で近寄りがたい雰囲気でしたが、私が大企業での競争からダウンシフトしてスローライフをしている話をしたら意気投合。その場で、イアントとリンダが、コブハウスのバイブルと呼べる自著にサインしてプレゼントしてくれたので、私はコブハウスを日本に広めると約束して帰国。

「The Hand Sculpted House」に、共著者 3 名、イアント、リンダ、マイケルのサイン



その後に、たのしあわせ大学院コブハウス科を開講し、生徒たちが卒業していき、建設案件が出てきて、同著の日本語版を販売し (*3)、今ではコブハウスのセルフビルドを助ける事業 (*4) をしています。


現代の建築は供給者側の理屈に住まう人が合わせています。規格、モジュールで大量生産されるカクカクした家に合せて住む人が調整。ところが、コブハウスは真逆の考え方。まず家を建てる土地をよく観察。季節や時間帯で変わる日あたり、風の様子、北極星の位置などを、自分の暮らしと着実に照らし合わせて、理想の生活に合う家をつくる。


「朝陽を浴びて目覚めたいから、窓はこの方向。ベッドの上で体を起こして伸びをするから、天井の高さはこれぐらいで十分。夜は北極星を見るから、のぞき穴はこの位置に空けて、、、」というように、自分のサイズ、生活リズムに合わせる家。「この窓はお隣の旦那さんが引き出物のあまりのガラス皿を持ってきて埋め込んで作ってくれたのよ」と物語の残る空間を自由に造形。


英国のマイケルさんの庭の瞑想小屋
ふじのリビングアートのコブハウス

自然の恵みで建てて自然に還せるホンモノの天然住宅。生態系を壊すのは最小限にして、その場の生態系を少しでも向上させたいと思って建てる。建設現場には、鉄骨も建設機械もないので「大人たちが泥んこで遊ぶように家を作る周りで、子供たちが走り回り、気が向いたらお手伝いする」という、なんとも平和な世界。


費用は、従来の 3 千万円かかる家の 10 分の 1 以下。材料は無料で手に入る。輸送費や材料費をかけても、3 百万円以下にできる。あるものを活用し、子供も大人もみんなで助け合い、身の丈にあった家をつくる。家のローンに縛られない人生を楽しめる。


家を 3 回建て直す話が出たら「そうだね。最低 3 回は建て直しても楽しいね」と答える人たちが増えていったら、世の中面白くなると思いませんか?


(*1) 自給自足雑誌「Mother Earth News」の英文誌に日本語翻訳をつけて半額で提供するビジネス。www.MotherEarthNews.jp/

(*2) タイニーハウスで著名なロイド・カーンによる「ラフィング・ハウス」の紹介。https://blog.shelterpub.com/laughing-house/

(*3) 洋書「The Hand Sculpted House」にスロー和訳付で提供。 https://www.motherearthnews.jp/tanoschool/cobhouse/

(*4) 筆者はマーク・エルマコラと共同で、コブハウスのセルフビルドをコンサルテーションと講習で支援。https://www.facebook.com/CobJobJapan

沓名輝政(くつなてるまさ)


ナマケモノ倶楽部で日英翻訳・通訳を担当。たのしあわせ研究所所長。国際折紙講師。週1起業家。マイファームの自産自消の講師。1972年愛知県生まれ。大学で物理を学び、GEなど日欧米のメーカーに20数年勤務。技師、技術営業、プロダクトマネージャ、事業部長を歴任。英語で技術と人をつなぐプロ。年間30万ワードの翻訳プロジェクトを完遂。


2010年に那須非電化工房の「地方で仕事を創る塾」第1期を卒業後、月3万円ビジネスから着想して、2012年にマザーアースニューズ日本版を創刊、2015年にリサージェンス日本版を創刊、同年たのしあわせ大学院を開校し「コブハウス」の伝道を開始。


2016年より小学校のPTA会長を3期、2019年に鎌ヶ谷市内小中14校を代表するPTA会長を務める。平日昼間は企業の翻訳エンジニア。朝晩は個人事業主。土日祝日は家長兼長男。妻、娘、息子と、畑、林、神社とお寺に囲まれた木の家で「わくごん = ワクワクごきげん」に暮らす。

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