9.11から20年目の9月11日に、改めて「環境=文化」を掲げなおす


ベレフの音楽を収録したCD「パチャ・ママ」

2001年の今日、9月11日、世界を震撼させた映像。「テロ」「アルカイダ」「正義」という言葉がとびかいました。ちょうどその1ヶ月後に、南米エクアドルから黒人グループ17名ほか環境活動家を招いて、国際会議「フィエスタ・エクアドル」を3週間にわたって企画していたナマケモノ倶楽部にとって、ゲストたち、とくに初の海外渡航で肌の色が黒いマリンバ集団「ベレフ」の踊り子たちは無事に日本に入国できるのか。世界がぴりぴりしている状態で、私たちはいったい何を訴えるのか、と各種調整に追われたことを思い出します。


小さなNGOが企画する環境平和イベントは、大きな話題となることはありませんでしたが、会場に足を運んでくださった方々には、平和への思いと同時に、グローバル化されたシステムをローカルへと転換するグッド・ニュースが発展途上国といわれるエクアドルにあることを学んだのでした。

同時に、大地とつながったマリンバの音楽は私達の魂をふるわせ、アンニャの詩は私達が何者であるかを思い起こさせてくれました。


いま、再び「正義」という言葉をよく耳にするようになり、「ウィルス」をめぐり、世界がふたたびピリピリしています。そんななか、2001年10月の「フィエスタ・エクアドル」を終えての辻信一さんの文章を一部抜粋しながら、ナマケモノ倶楽部の「環境=文化」運動を再び掲げ直そうと思います。

(事務局)


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フィエスタ・エクアドルを終えて 辻信一


(略)フィエスタの開催を控えた9月11日に米国で同時多発テロが起き、10月8日には米英軍によるアフガニスタン空爆が開始された。10月8日の東京は朝から雨、その雨の中、フィエスタのメインイベントが行われた。まずルース・マリーナ・ヴェガ(以下敬称略)のリードで、「ひとつの手、ひとつのこころ、ひとつの思い・・・」というキチュア語による祈り。ぼくらナマケモノ倶楽部世話人三人が空爆の開始への抗議の意思をこめて声明(後述)を発表した。それに続いてアンニャ・ライトとカルロス・ソリージャのリードで「イマジン」を合唱。その日の朝、ナマクラ世話人の中村、ソリージャ、フィエスタ実行委員長の吉岡は、この歌を歌うことを決めていたという。(略)


合唱の後、一分間の黙祷。空爆で始まった長い長い一日が終わる頃、参加者はベレフとともに歌い踊っていた。これ以後、フィエスタの間中、ぼくは毎日ベレフと踊った。これまでずいぶんイベントとか会議とかをオーガナイズしてきたぼくだが、こんなに踊ったイベントはなかった。


メインイベントの後、踊りつかれたぼくらが控え室でベレフのロレーナの誕生日を祝っている時のこと。ルース・デル・アルバが涙を浮かべながら「アキ・アイ・ムチャ・パス(ここには平和がいっぱい)」と言った。そのことばが、フィエスタの期間中ずっとぼくのこころの中に通奏低音のように響いていた。(略)


ブッシュ大統領が「テロか反テロか」、小泉首相が「正義か悪か」などという子供だましにもならない二者択一を迫り、「世論」なるものもそれに大きく流されていくように見えた物騒な御時世にあって、エクアドルからのゲストたちは改めてぼくたちに平和ということばをその根元から考え直させてくれた。そしてそのことばの周囲にある様々なことばたち。治安、経済成長、軍事的優位、グローバリズム、エネルギー政策。


ぼくたちはいつの間にか、安全で自由で幸せな生き方があるとすれば、それは経済大国で、軍事大国で、エネルギー大国に住まない限り不可能だ、と思い込まされていたのではないか。まるでその自分の国が、経済と軍事とエネルギーにおいて優位にたつことによってグローバリスムの過酷な競争に勝ち抜いていかない限り、自分の未来はないとでもいうように。文化でさえグローバル化の波に乗り遅れてはならないという強迫観念を、ぼくたちはいつの間にかもたされていたのではないか。エクアドルからのゲストたちは、皆、「安全で自由で幸せな生き方」を保証してくれるはずの経済力も、軍事力もない「貧しい」「遅れた」地域からやってきた。我々のこれまでのものさしで言えば、それは、グローバル化する世界から取り残された哀れな「後進」地域。


しかし、彼らがフィエスタ・エクアドルで明らかにしたのは、彼らがもうすでに開発やグローバリズムによって「先進国」を追いかけるレースから下りてしまっており、それにかわる「もうひとつの」ヴィジョンを育み始めているということ。我々が想像したこともないような豊かな生物多様性と文化多様性を、開発なるものによって壊したり、目先の利益や経済成長のために売り払ったりするのではなく、むしろそれらを守り、またそれらに守られることによって可能になる「安全で自由で幸せな生き方」を選ぶということ。我々が迎えたゲストたちは、世界各地に源をもつこうした新しいヴィジョンを、エクアドルで描き、実現するリーダーたちだった。そして彼らはその新しいコミュニティと地域のモデルをコタカチに、バイーアに、サン・ロレンソに、オルメドに創り出しつつある。


それがカルロス・ソリージャの新しい夢。彼は言った、「これまでの夢が悪夢と化した今、それにかわる夢が求められている」と。ルース・マリーナ・ヴェガはこれまでの経済(economia)にかわる新しい経済(ecosimia)のヴィジョンを提起した。宗教のように我々を呪縛してきた経済が自然や文化の自己否定(economiaということばに含まれているno)の上に成り立っていたのに対して、新しい経済は肯定のsi(yes)の上に成り立つだろう、と。


「グローバル化する文化」とか主流のメディアにのった「文化」に慣らされた者の五感をベレフやパパ・ロンコンは解放してくれた。それまで抽象的な概念でしかなかった「自然と文化の融合」が、そこでは具体的で身体的なものとして、溢れるような豊かさとして、ぼくたちを圧倒した。


ルース・マリーナの残していったお話を紹介して、ぼくの感想を終わろう。

ある時、アマゾンの森が燃えていた。大きくて強い動物たちは我先にと逃げていった。しかしクリキンディ(金の鳥)と呼ばれるハチドリだけは、口ばしに一滴ずつ水を含んでは、何度も何度も飛んでいっては燃えている森の上に落とした。それを見て大きくて強い動物たちはクリキンディを馬鹿にして笑った。「そんなことをして森の火が消えるとでも思っているのか」。それに答えてクリキンディは言った。「私は、私にできることをやっているの」


クリキンディはエクアドル、そしてエクアドルで闘っている仲間たち。ぼくたちもクリキンディでありたい。

フィエスタ・エクアドルから、平和へのメッセージ

(この声明は2001年10月8日、米英軍によるアフガニスタン空爆の始まった日に、「フィエスタ・エクアドル」の東京会場で読みあげられた)

 また新たな「戦争」が始まった。これが最後の戦争になるかもしれない。それは不正に満ちた世界から生まれた争い。思えば私たちの近代文明は長い間、母なる大地に対して、先住民族に対して、そしてお互い同士に対して戦争をしかけてきた。今回のは、そんな一連の争いの新しい顔。

 私たちにとって今、何にもまして必要なこと。それは自分のこころの奥深くに、いっぱいの愛と勇気を見出すこと。そしてその愛と勇気をもって、新しい平和で持続可能な社会のモデルをつくり出すために、今なおこの世に辛うじて残された生命と文化の多様性という遺産を守るために、行動すること。

 でも一体どこにそんな強さを、勇気を探し出すことができるだろう? 答えはきっとあなたのこころの奥にあるはず。私たちはよく知っている。ひとつ、暴力が平和を、愛を生み出すことは決してないということ、を。ふたつ、私はひとりではない、ということ。この怒り、悲しみ、そして平和を愛する気持ちは私ひとりのものではないということ、を。みっつ、私たちは偉大なパチャママ(母なる大地)とともにあるということ。パチャママが私たちひとりひとりを、その無限の美とエネルギーをもって育んでくれるということ、を。

Love, Peace and Life, 2001年10月8日   ナマケモノ倶楽部世話人(アンニャ・ライト、中村隆市、辻信一) ( 原文は英文。翻訳協力、きむら理眞)

(英語原文) Another war has started. It may be the last war on Earth. It is a war born from an unjust world; a new face of a long battle that modern humans have waged against the Earth, indigenous peoples and each other.

And now we need so desperately to find in our hearts enough compassion and enough commitment to actively create peace, and actively build new models of society and passionately defend the last vestiges of human- and bio-diversity.

And how to find this strength? Be sure in what we know deep in our hearts; that violence can never bring peace; that we are not alone in our anger, sadness and love of peace; and that the power of Mother Earth, Pacha Mama gives boundless energy and beauty to nurture us as we continue to evolve...


October 8, 2001, at Fiesta Ecuador, in Tokyo, Japan Anja Light Ryuichi Nakamura Keibo Oiwa


東京イベントのオープニングで「イマジン」を歌う

明治学院大学横浜キャンパスでの「ベレフ」


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