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戦いでは何も解決しません ー慈悲と信頼の時代へ サティシュ・クマール

前回に続き、サティシュさんが2009年、築地本願寺での「平和フォーラム2009」からのメッセージを、辻さんに改めて翻訳・編集いただき、下に紹介します。


新型コロナウィルスで、困難に直面し、また、どう在るべきかを模索しているすべての人への学びになればと、このフォーラムのダイジェスト映像(26分)を、関係者のご協力を得てオンライン公開することにしました。(記事下部)あわせてご覧いただければ幸いです。

 

戦いでは何も解決しません

ー慈悲と信頼の時代へ

2009年11月21日、築地本願寺「平和フォーラム2009」対談より

お話:サティシュ・クマール

翻訳:辻信一


平和の原理は慈愛と非暴力


「正義=justice」という考えは仏教にはありません。私にもありません。「正義は我にあり」や「私は正しい」というのは狭い考え方です。ある人の正義は、他の人の不正義でありうる。この正義という考えの上に平和を築くことはできません。 「私が正しい」とか「あなたは間違っている」とかというのは主観です。結局のところ、誰が正しく、誰が間違っているかを客観的に判断する基準はないのです。私にとっては、慈愛=compassionと非暴力=non-violenceこそが平和の二つの至上原理です。正義は政治的なゲームで使われる言葉に過ぎません。


恐怖の種ではなく、信頼の種を育てましょう

戦争の原因と恐怖の原因は同じです。私があなたを他者として、切り離されたものとして見る、その時に恐怖は生じる。もし私があなたをつながるものとして、兄弟、姉妹として見る時、恐れはありません。あなたを、アルカイダ、タリバン、イラン人などと呼ぶ時、私はあなたを兄弟姉妹としてではなく、「他人」と見ているのです。それが恐怖の種です。 もちろん、怒りや欲望も人間の本性の一部です。恐怖の種子も私たちの中にある。でも、だからといって、社会はその種子に水をやって育てなくてもいいのです。社会は恐怖の代わりに、信頼をこそ励まし、育てるべきです。 私の恐怖は他者の恐怖を励まし、育てる。恐怖は恐怖を生む。逆に、私があなたを信頼すれば、あなたも私を信頼する。信頼は信頼を生む。 恐怖の原因はつながりの欠如にあります。とすれば、その恐怖から抜け出す方法は、「全てはつながっている」ことに気づくことです。





Give Peace a Chance!

「ブッダとテロリスト」という物語がありますが、そのテーマは、あなたに敵対する人、“敵”とされている人と話をする、ということです。友だちと話をするのは誰でもできますね。でも、“敵”と話をする、そして敵対関係に終止符を打つことに双方が納得できるところまでもっていければ、あなたは本当のピースメーカーです。 同様に、社会全体が平和であるためには、これから起こるかもしれない全ての対立、全ての問題は交渉によって、非暴力のコミュニケーションによって解決されねばなりません。


20世紀は戦争の世紀でした。21世紀は平和の世紀にしましょう。私たちはたくさんの戦争を見てきました。でも、戦争が問題を何一つ解決できなかったということを、私たちは知っています。 さあ、Give Peace a Chance -- 平和の出番です!



平和フォーラム2009「おかげさまからつなげる世界」

開催日時:2009年11月21日 於:築地本願寺


トーク︓サティシュ・クマール(環境運動家)、辻信⼀(⽂化⼈類学者)、

    Yae(半農半歌⼿)、松本智量(延⽴寺住職)

⾳楽︓Yae(半農半歌⼿)、松⾕冬太(ソウルシンガー)

撮影・編集︓本⽥茂   制作︓ナマケモノ倶楽部(2009年)

 

サティシュ・クマール


1936 年インド生まれ。9歳で出家しジャイナ教の修行僧となる。18 歳のとき還俗。マハトマ・ガンジーの非暴力と自立の思想に共鳴し、2 年半かけて、核大国の首脳に核兵器の放棄を説く1 万4000 キロの平和巡礼を行う。1973 年から英国に定住。 E.F. シューマッハ―(イギリスの経済学者、『スモール・イズ・ビューティフル』著者)とガンジーの思想を引き継ぎ、 イギリス南西部にスモール・スクールとシューマッハ―・カレッジを創設。

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