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「みんなのお金」がもたらすコミュニティ活動~レオナルド・ドゥラン(メキシコ)

2017年11月11日 しあわせの経済世界フォーラム1日目 レオナルド・ドゥラン・オルギン氏 講演

メキシコの先住民族の組合トセパン・ティタタニスケを代表してお話します。トセパン・ティタタニスケは、ナワット語で 「団結して勝ち取ろう」という意味です。組合は今年で40周年を迎えました。短い時間ですが、その取組みを紹介したいと思います。

今日、ここにいるみなさんと同じく、私たちは破壊的な経済へのオルタナティブに取り組んでいます。破壊的な経済によって貧困など大きな社会問題が生まれています。私たち先住民は、それとは異なる生活環境を目指し団結して組合を立ち上げました。40年目を迎える2017年現在、35,000世帯が組合員として活動しています。

私たちの活動拠点は、メキシコ中央部に位置するプエブラ州北東部の山岳地域です。地理的にも生物学的にも非常に多様性のある地域です。この多様性によって、私たちはさまざまな活動を続けることができ、今日に至っています。(活動の詳細を紹介していきたいと思います。) 祖父母の代からの地道な活動が実を結び現在の尊厳を取り戻した暮らしがあります。私たちの組合では、農業生産だけでなく加工販売など、さまざまな分野で活動しています。

具体的な活動について紹介していきます。

私たちは独自の金融機関、マイクロクレジットを設立しています。名前はトセパン・トミンです。トセパン・トミンは「みんなのお金」という意味です。トセパン・トミンは、「お金が最も重要なものではない」というメッセージを組合員に伝える意味もあります。お金だけに依存する経済ではなく、お金の交換価値を見出す機会になっています。

トセパン・トミンに口座を作るとこのお金が組合員の間で回っていきます。つまり、組合員のために使われるお金になります。お金は負債を負うためのものではないこと、お金を有効に使うことの大切さを、子どもの頃から学びます。

また、私たちは女性の社会進出もサポートしています。私たちの地域は、伝統的には男性優位の土地柄でした。20年前から女性の社会的地位向上に取り組みはじめ、組合40年を迎えた今年、初の女性代表が誕生しました。

また、エコツアーを推進するため宿泊施設トセパン・カリも建てました。トセパン・カリは「私たちの家」という意味です。私たちの地域を訪問した方なら、誰でも宿泊できます。観光業を発展させることは、外部から人を呼ぶだけでなく地域の若者の雇用を生むことにも貢献しています。

7年前からは、保健衛生分野の活動も始めています。「トセパン・パッティ」という組合を作りました。病気になってから健康を取り戻すのではなく、病気にならない身体を作り、健康を保つよう活動をしています。

さらに、私たちは子どもたちの教育にも力を入れています。10年前に組合で幼稚園、小学校、中学校を設立しました。「トセパン・カルネマチティロヤン」、「みんなの学校」という意味です。子どもたちは、手を使い、心で感じることの大切さを学校で学びます。子どもたちにも土を耕すことの大切さを学んでほしいという親の願いです。

私たちの活動の中でキーワードとなるのは「多様性」そして「団結」です。この「団結」という思いのもとに「団結して勝ち取る」を意味するトセパン・ティタタニスケという組合を設立したのです。

また、この「多様性」には、農業における多様性も含まれます。私たちの命をつないでくれる作物ですが、その畑や農園を見回すといろいろな作物があるのがお分かり頂けるかと思います。

例えばコーヒー栽培を例に挙げますと、コーヒー農園はコーヒーだけを栽培するのではありません。コーヒーだけではなく、他の作物も取れる非常に生産性の高い森になっています。このコーヒーの森には、コーヒーに日陰をもらたしてくれる樹木や果樹などさまざまな作物が一緒に育っています。

このコーヒーの森から採れる産物を見て頂くと、コーヒーだけでなく、果樹、シナモンやハチミツなど多様な生産物をもたらしてくれる森であることがおわかりいただけると思います。そこでは、動植物、昆虫類、鳥類など、そうした多様性もみることができます。私たちの森は、スローフードという世界的な運動の中でも非常に注目されています。

次に、この人間開発指標のグラフから、組合員の中でどのように私たちの活動の結果が出たかがお伝えできるかと思います。白い線が組合員 ピンクの線が組合員以外の指標なんですが、それを見て頂くと収入という点では大きな差は見られません。しかし、精神的な面からは組合員に非常に高い満足度を見ることができます。これは、5年前に外部の団体の調査に基づいて作られた指標です。

これまで40年間活動を続けてきたこの組合、地域には残念ながら現在、脅威が迫ってきています。それは鉱山開発、それに伴う水力発電建設という脅威です。

こうした破壊的な経済活動、計画が持ち上がった中でも、私たち住民は平和的に、そして非暴力のかたちで反対運動を続けています。また、自分たちだけでなく、他地域の先住民が置かれている困難な状況に対しても、私たちは手を貸したいと思っています。

先日メキシコで大地震が起き、私たちとは別の地域ですが、先住民が暮らす多くの住宅が倒壊しました。そういった地域で私たちは仮設住宅をつくる活動を始めています。「団結」と「愛」というキーワードをもとに、明るい未来を次世代につないでいきたいと思っています。

ありがとうございました。

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