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執筆者の写真信一 辻

ペマの引越し


タクツァン巡礼でのペマ、2019夏

ブータンの友、ペマ・ギャルポが建て終わったばかりの家に入居した。コロナ禍で仕事がなくなり、これまで住んでいた貸家の家賃を払い続けることがむずかしくなった。南東部ブータンの故郷に帰ることも考えたが、息子たちの学業を支えるためには、ティンプー周辺からまだ離れるわけにはいかない。そこで、友だちとの物々交換でなんとか手に入れた土地に、家を建てることを決意したのが一年前。親族や友人たちの支援を得て、ついに新居が完成した。


おとといは、家の外観と、谷を見下ろす家からの風景を見てほしいと、テレビ電話をくれた。場所は首都ティンプーと、パロ空港のちょうど真ん中あたり。谷の向こうに、二つの街をつなぐ道路が見える。そして昨夜は、彼の幼馴染で、国を代表する音楽家であるジグメ・ドゥッパがその家の新しい仏壇に向かって歌とダムニェン演奏を奉納しにきたというので、またペマが電話をよこした。ジグメの歌声に乗って、ブータンの初秋の澄み渡った大気が、そしてペマとその家族、そしてコミュニティの喜びが、ぼくの心にも届いた。


旧宅で過ごした楽しい時間も蘇る。学生たちとの実習や、ナマケモノ倶楽部のツアーのときも、必ずその家で宴会を催してくれた。初秋は、庭の数本のリンゴの木から、一人ひとり実をもいで食べた。山盛りのマツタケ。ほぼ毎回、ジグメがやってきて、トークと音楽をプレゼントしてくれた。看護師の妻、チミーが用意してくれるホテルよりはるかにうまい家庭料理。


ペマ一家の新しい家でもまた楽しい宴が積み重ねられるだろう。ぼくもまたそこに加われる日を楽しみにしたい。


ペマの旧宅でダムニェンを弾き、歌うジグメ

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