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北海道から戻る


7月に続き、8月末も北海道長沼のメノビレッジに滞在した。


朝のヨガのあいだ、そして夜、眠りに落ちる前、この数ヶ月よくそうしてきたように、ティエリー・ラングのアルバム『Lyoba Revisited』やチャーリー・ヘイドンとパット・メセニーとの『Beyond the Missouri Sky』を流していた。時々はバッハを挟みながら。


みんな総出で、二晩続けて、キャンプファイヤーをしてくれた。一週間前の奥会津に続き、満天の星の下での焚き火を楽しめるありがたさ。二晩めは、天幕の下で、レイモンド・明子夫妻の長男カズくんと奥さんのマイさんが羊のバーベキューをしてくれた。この農場の草を食べて育ったおいしい羊の肉を、噛みしめる。近くに住む農家の玉城一家4人も合流。玉城さんは三線を持参し、父方のルーツである沖縄の島唄を披露してくれた。ぼくがリクエストした「てぃんさぐぬ花」も歌ってくれた。



次に、三男ケンくんのギターと歌の登場だ。なかでもぼくが気に入ったのは、彼も大好きだというジェームズ・テイラーの「Our Town」

故郷の町が衰退いく様を描きながら、でも、この町が好きだ。これからどうなるにしても、ぼくらの町なんだ・・・と歌う。



長沼に滞在しているあいだに、二風谷に足を伸ばして二泊した。久しぶりに貝澤家を訪れてご馳走になり、翌日は、いまやすっかり土砂が堆積して砂防ダムと化した二風谷ダムや、さらに上流に建設中の平取ダムとその周辺を耕一さんが案内してくれた。貝澤家には数日前にミュージシャンのO K Iさんが滞在中だったという。


北海道から戻ったら、9月になっていた。アマゾン・プライムのオータム・ジャズの中に、ニーナ・シモンの「ワン・セプテンバー・デイ」があるのを見つけて聴く。

Years, they will come and go

Sometimes the tears will flow

Some of my memories will fade

But I'll always remember that one September day...


その後、数曲聴くうちに、ジョン・バティステが唄う「素晴らしき世界」が流れた。かつてルイ・アームストロングが歌ったこの曲は世界中で多くの人を魅了してきた傑作に違いないのだが、それはいかにも古き良きアメリカの主題歌といった趣きで、アメリカに長く暮らしたぼくにも、その曲で思い浮かべるのは裕福な白人たちの住む郊外の風景なのだ。しかも、あの歌は、政党や宗教組織などにもさんざん使い古されてきた。その曲が、サッチモの孫世代にあたる現代アメリカの代表的なアーティストによって、少し哀愁を帯びた、エコロジカルで瞑想的な歌として蘇った。そこに希望を感じる。



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